鏡
きみはいつも僕を見ない
僕は今までたくさんの人のいろんな顔を見てきた
それは、
歯磨きをしているときのちょっと間抜けな顔だったり
嬉しさを隠せない目尻が下がった顔だったり
目を真っ赤にしてもなお涙を見せない顔だったり
本当にいっぱいの顔を見てきたんだ
そして、見られてきた
彼らには僕のことはただの物としか映らないのだろうけど
彼らは僕を見て
笑ったり
睨んだり
なぜか傷ついた顔をしたりもした
本当にいっぱいの人が、僕を見ているのに
きみは見ない
決して見ない
僕は何もしてないし、出来やしないんだけど
どうやら嫌われているようで
とても悲しい
きみはなぜ僕を見てくれないんだろう
手を洗うときも
うがいをするときも
化粧をするときでさえも
きみはずっと見ない
そっぽを向いて
僕のほうにちらりとも視線をくれない
だから僕は、
きみの顔を知らない
僕が知ってるのは
きみの後ろ姿と
かろうじて見える横顔
髪を結い上げたときに見える白いうなじ
それだけだ
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今日もきみは、
僕を見ずに出かけてしまったね
ちょっと楽しそうな感じが、背中から受けとれたよ
僕はもう、
きみがどういう気持ちなのか
顔を見なくてもわかるんだ
今日は
友達と遊ぶのかな
それとも、
この間電話でいってた人と会うのかな
きみがこの前友達と話していたとき
ぽろりと零れ出た名前には
あまずっぱい気持ちがいっぱい詰まってた
それはきっと、
恋しいとか
切ないとか
そういうものなんだろうね
きみがその○○さんに向かって
笑ったり
起こったり
はにかんだりしているのだろうと思うと
僕はちょっと妬けちゃうけど
きみが本当に好きなら
頑張ってほしい
僕は手伝いが出来るわけでもないし
ましてや応援の声をかけることさえも出来ないんだけど
きみが大好きだから
僕はきみの顔を知らないけど
これだけは間違い無いから
どうか幸せになって欲しいんだ
今すぐには無理かもしれないけど
いつか
いつかでいいから
ゆっくりでいいから
絶対幸せになって
僕のことを見て欲しい
頬を綺麗に紅く染めて
幸せそうな笑顔を僕にください
それまできみの顔が見れないのは残念だけど
きみの一番綺麗な笑顔を
最初に見たいんだ
その笑顔だけで
僕は幸せだよ
僕の大好きなきみへ
きみのこれからの幸せを願います。